新NISAの生涯投資枠は1,800万円。年間の上限は360万円です。
年360万円を5年間続ければ、最短で枠を埋め切れます。この「満額投資」を目指すべきだ、という話をよく見かけます。
では実際に、どれくらいの人ができているのか。
金融庁が公表しているデータを、そのまま調べました。
そして36.6%は、2025年に1円も買っていません。これが実態です。
- NISA口座2,855万件の年間投資額の分布(金融庁データ)
- 満額に近い人がどの年代に多いのか
- 1,800万円まで月いくらで何年かかるか
- そして、満額を目指さなくていい理由
まず、制度をおさらいします
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 生涯投資枠 | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) |
| 年間の上限 | 360万円(つみたて120万円+成長240万円) |
| 最短で埋める年数 | 5年 |
年360万円は、月30万円です。
この数字を見て、どう感じたでしょうか。
実際のデータを見ます

金融庁の「NISA口座の利用状況調査」(2025年12月末時点)から、2025年の1年間にいくら投資したかの分布です。
| 年間の投資額 | 口座数 | 割合 |
|---|---|---|
| 0円(買っていない) | 1,044万件 | 36.6% |
| 60万円以下 | 1,010万件 | 35.4% |
| 60万〜120万円 | 239万件 | 8.4% |
| 120万〜180万円 | 105万件 | 3.7% |
| 180万〜240万円 | 202万件 | 7.1% |
| 240万〜300万円 | 90万件 | 3.2% |
| 300万〜360万円 | 164万件 | 5.7% |
7割は、年60万円以下でした
「0円」と「60万円以下」を足すと、72.0%になります。
年60万円は、月5万円です。NISA口座を持っている人の7割が、月5万円以下ということになります。
そして、36.6%は1円も買っていません
ここは正直に補足しておきます。
この「0円」には、年の途中や年末に口座を開いたばかりの人も含まれています。だから全員が「開設したのに放置している」わけではありません。
それでも、1,044万件という数字は大きいです。口座を作ったあと、何もしていない人がかなりいるのは間違いありません。
口座を開いた時点で満足してしまうのは、いちばんもったいないパターンです。
満額に近い人は、どの年代に多いのか

年300万〜360万円を投資した人の割合を、年代別に見ます。
- 20歳代……2.1%
- 30歳代……6.1%
- 40歳代……7.5%
- 50歳代……7.6%(最多)
- 60歳代……7.1%
- 70歳代……3.3%
- 80歳代以上……1.2%
いちばん多い50代でも7.6%。20代なら2.1%です。
40代から60代に多いのは、収入がピークに近く、教育費が一段落した世帯があるからでしょう。退職金を運用に回すケースもあります。
つまり満額投資は、条件がそろった一部の人がやっていることです。20代・30代が「できていない」のは、まったく普通のことです。
1,800万円まで、月いくらで何年かかるか

投資したお金の合計(元本)だけで計算すると、こうなります。
| 毎月の金額 | 満額まで | 現実的かどうか |
|---|---|---|
| 月3万円 | 50年 | 元本だけでは届きにくい |
| 月5万円 | 30年 | 30歳で始めれば60歳で満額 |
| 月10万円 | 15年 | 40歳で始めても55歳 |
| 月30万円 | 5年 | これが5.7%の世界 |
月5万円で、30年。
30歳から始めれば、60歳のときには枠を埋め終えている計算になります。5年で埋める必要は、どこにもありません。
※投資した元本だけの計算です。実際は運用益がつくので、資産額としてはこれより早く増えることが多くなります(ただし枠の消費は買った金額でカウントされます)。
なぜ「満額」を焦らなくていいのか
理由は3つあります。
1. 枠は逃げません
旧NISAには「その年に使わなかった枠は消える」というルールがありました。だから焦る意味がありました。
でも新NISAの生涯投資枠1,800万円は、一生かけて使えます。今年使わなかったから減る、ということはありません。
2. 生活防衛資金を削ってまで投資すると、逆に損をします
これがいちばん危ないパターンです。
手元の現金を削って投資に回すと、値下がりしたタイミングで売らざるを得なくなります。急な出費が来たときに、他に取り崩すものがないからです。
投資で失敗する典型が、これです。生活防衛資金がいくら必要かはこちらの記事で計算できます。
3. 続けることのほうが、金額より効きます
月30万円を1年で止めるより、月3万円を20年続けるほうが、たいていの場合いい結果になります。
投資は、時間を味方につけるものだからです。
枠を埋めることが目的になると、無理をして続かなくなります。
それでも枠を早く埋めたい人へ
もちろん、余裕があるなら早く埋める意味はあります。非課税で運用できる期間が長くなるからです。
その場合の順番は、こうです。
- 生活防衛資金を確保する(生活費の3〜6ヶ月分)
- 使う予定のあるお金を分けておく(車検、教育費、住宅資金)
- 残ったお金で、枠を埋めていく
この順番を守れば、無理なく増やせます。逆にすると、必ずどこかで崩れます。
お金の順番については6ステップの記事にまとめました。
ちなみに、2026年から少し便利になります
令和8年度の税制改正で、売却した分の枠が、その年のうちに復活する方向で見直しが進んでいます。
これまでは売却しても枠が戻るのは翌年でした。使い勝手は改善しますが、「だから売って買い直そう」という話ではありません。長期で持ち続けるほうが、ほとんどの人にとって有利です。
で、いくら投資すればいいのか
答えは、人によって違います。ただ、目安はあります。
| いまの状況 | おすすめの金額 |
|---|---|
| 生活防衛資金がまだない | 月5,000円から。まず慣れる |
| 生活防衛資金が1ヶ月分ある | 月1万〜3万円。貯金と並行で |
| 3〜6ヶ月分たまっている | 月5万円を目標に |
| それ以上の余裕がある | 枠を埋めにいってもいい |
何を買うかで迷っている方は、新NISAで結局どれを買う?をどうぞ。オルカンかS&P500の1本で十分という話を書いています。
たこ先生の、正直な話
この数字を調べていて、少し安心しました。
SNSを見ていると、「満額入れました」「1,800万円埋めました」という投稿が目に入ります。それを見て、自分は遅れているのではないかと感じることがありました。
でも、データを開いたら5.7%でした。
声が大きい人が目立っているだけで、実際には20人に1人です。しかも半分近くは、1円も買っていない。
私自身、始めたころは月5,000円でした。いま思えば少なすぎる金額です。でも、あのとき「月30万円でないと意味がない」と思っていたら、たぶん始めていません。
比べるべきなのは、SNSの誰かではなく、何もしなかった場合の自分です。
月5,000円でも、20年続ければ120万円になります。何もしなければ0円です。その差は、満額かどうかより大きいと思っています。
まとめ|満額は、目標ではなく上限です
- 満額に近い水準まで投資した人は5.7%(金融庁データ)
- 36.6%は1円も買っていない。7割は年60万円以下
- いちばん多い50代でも7.6%。20代は2.1%
- 月5万円なら30年で1,800万円に届く。焦る必要はない
- 生活防衛資金を削って投資すると、安いときに売る羽目になる
1,800万円という数字は、目標ではなく上限です。
今日やることは、ひとつだけです。
いまの積立額を確認してください。止まっていたら、月5,000円でも再開する。それだけで、36.6%の側から抜けられます。
※本記事の数値は金融庁「NISA口座の利用状況調査」(2025年12月末時点)にもとづきます。年間投資額の分布は2025年1月1日〜12月31日の実績で、年の途中に開設された口座も含みます。制度内容は変更されることがあります。投資の判断はご自身の責任でお願いします。



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