「生活防衛資金は、3〜6ヶ月分」
どこを見ても、そう書いてあります。私もこれまで、そう書いてきました。
でも、正直に言います。
必要なのは「何ヶ月分か」ではなく、「あなたの生活費 × あなたの事情」だからです。同じ会社員でも、実家暮らしと子育て中では倍近く変わります。
この記事では、あなたの金額を、あなた自身で出せるところまでやります。所要時間は15分ほどです。
先に、いちばん多いケースの答えだけ書いておきます。
一人暮らしの会社員なら、だいたい60万〜120万円です。
- 自分の生活費の出し方(平均額は使いません)
- 立場別に、何ヶ月分必要なのか
- なぜ3ヶ月が最低ラインなのか(失業給付は、すぐには出ません)
- 金額の早見表
- 貯まるまで、投資は待つべきなのか
STEP1|まず、自分の生活費を出す
ここを飛ばして「3ヶ月分」と言われても、掛け算する数字がありません。
参考までに、総務省の家計調査では二人以上の世帯の消費支出が月290,886円(2026年6月分・2026年8月7日公表)となっています。
世帯人数も、住んでいる場所も、家賃があるかどうかも違うからです。平均は「日本のどこかにいる誰か」の金額であって、あなたの金額ではありません。
15分で出す方法

家計簿をつける必要はありません。先月の明細を見るだけです。
- クレジットカードの明細アプリを開く
- 銀行アプリの引き落とし履歴を開く
- 現金で使った分は、だいたいの感覚でOK
そして、ここが大事なところです。
| 入れるもの(生活に必要) | 入れないもの(止められる) |
|---|---|
| 家賃・住宅ローン 食費 水道光熱費 通信費 保険料 医療費 交通費 子どもの学費・保育料 奨学金などの返済 |
旅行・レジャー 洋服・美容 外食のうち、つきあいの分 サブスク(見ていないもの) 貯蓄・投資への積立 ふるさと納税 |
いつもの支出をそのまま使うと、金額が大きくなりすぎて「こんなに貯められない」と諦めてしまいます。非常時は、旅行にも行かないし、服も買いません。
この作業自体につまずいたら、家計管理のやり方と家計簿アプリの選び方に手順があります。
STEP2|次に、何ヶ月分かを決める
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
「3〜6ヶ月」と幅があるのは、決めきれないからではありません。立場によって、必要な月数が本当に違うからです。

| 立場 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 会社員・独身・実家暮らし | 3ヶ月 | 家賃がなく、いざとなれば支出を絞れる |
| 会社員・独身・一人暮らし | 3〜6ヶ月 | 家賃が固定で出ていく。いちばん多いケース |
| 会社員・共働き(子どもなし) | 3〜6ヶ月 | 二人同時に失業する確率は低い |
| 会社員・子どもあり | 6ヶ月 | 教育費・保育料は止められない |
| 片働き(配偶者が扶養内) | 6ヶ月 | 収入源がひとつしかない |
| 自営業・フリーランス | 12ヶ月 | 原則、失業給付がありません |
近いうちに転職を考えているなら、上の月数に「+2ヶ月」してください。理由は次の章で説明します。ここが、多くの人が見落としているところです。
なぜ3ヶ月が最低ラインなのか|失業給付は、すぐには出ません
「会社員は失業給付があるから、そんなに要らないのでは」
そう思う方は多いと思います。給付があるのは事実です。ただし、辞めた翌月から振り込まれるわけではありません。

自己都合で辞めた場合、こういう流れになります。
| 段階 | 中身 |
|---|---|
| ① 待期期間 | 7日間。離職理由に関係なく、全員に設けられます |
| ② 給付制限 | 原則1ヶ月。2025年4月の改正で、従来の2ヶ月から短くなりました |
| ③ 認定と振込 | 失業の認定を受けてから、おおむね1週間ほどで振込 |
この「収入がゼロの空白期間」を埋めるのが、生活防衛資金の本来の役目です。だから3ヶ月が最低ラインなんですね。
そして、給付が始まってももらえるのは以前の給料の全額ではありません。目安として5〜8割程度です。生活防衛資金は、その差額も埋めることになります。
※病気・介護・妊娠・出産・ハラスメントなど、正当な理由がある「特定理由離職者」に認定されると給付制限はつきません。会社都合の場合も同様です。受給日数や金額の詳しい話は失業したらもらえるお金にまとめてあります。
あなたの金額|早見表
STEP1で出した生活費に、STEP2で決めた月数を掛けます。

| 月の生活費 | 3ヶ月分 | 6ヶ月分 | 12ヶ月分 |
|---|---|---|---|
| 15万円 | 45万円 | 90万円 | 180万円 |
| 20万円 | 60万円 | 120万円 | 240万円 |
| 25万円 | 75万円 | 150万円 | 300万円 |
| 30万円 | 90万円 | 180万円 | 360万円 |
大きな数字に見えるかもしれません。でも、この記事の最後まで読んでいただければ、今日から動ける形にできます。
どこに置くか|普通預金が正解です
結論から書きます。すぐに引き出せる普通預金の一択です。
定期預金も、個人向け国債も、ここには向きません。投資信託は、もってのほかです。必要になるタイミングと、値下がりするタイミングは、だいたい重なります。
ただし、置き場所は選べます。
同じ普通預金でも、大手銀行の金利とネット銀行の金利には桁の差があります。たとえば楽天銀行はマネーブリッジの設定で年0.48%(1円〜1,000万円/2026年8月3日から)。100万円を1年置けば、大手銀行との差ははっきり出ます。
置き場所の話は楽天銀行の金利の記事に、口座の作り方は楽天の口座を作る順番にあります。ただし、金利のために引き出しにくい商品を選ぶのは本末転倒です。そこだけ気をつけてください。
できれば、生活費の口座とは分けてください
同じ口座に入れておくと、残高が多く見えて、少しずつ使ってしまいます。別の口座に移して、キャッシュカードは持ち歩かない。これだけで、かなり守れます。(口座の使い分け)
貯まるまで、投資は待つべき?
これは、よく聞かれます。私の答えははっきりしています。
120万円を貯めきってから投資を始めようとすると、月3万円のペースで3年以上かかります。その3年間、まったく投資をしないのは、それはそれで大きな機会損失です。
おすすめの配分は、こうです。
- 生活防衛資金に、8〜9割/貯まるまでは、こちらを優先
- 投資に、1〜2割/月5,000円でいい。「積立をしている状態」に入るのが目的
ただし、生活費の1ヶ月分もない状態なら、投資はいったん止めてください。そこは順番を守ったほうがいいです。まず1ヶ月分。次に3ヶ月分。そこまで来たら、並行で進めて構いません。
全体の順番はお金の順番6ステップに、貯める仕組みは先取り貯金にまとめてあります。
やってはいけない3つ
① 目標を高くしすぎて、始められない
「12ヶ月分ないと不安だから」と360万円を目標にして、遠すぎて動けない。これがいちばん多い失敗です。まず1ヶ月分。15万円でも20万円でも、それがあるだけで景色が変わります。
② 投資信託で持つ
「どうせ置いておくなら増やしたい」と思う気持ちはわかります。でも必要になるのは、たいてい世の中が悪いときです。株価が下がっている最中に、生活費のために売る。これがいちばん避けたい形です。
③ 貯まったあと、そのまま増やし続ける
意外な落とし穴です。目標額に届いたら、そこで止めてください。それ以上の現金は、インフレでゆっくり目減りしていきます。超えた分は投資に回す、という切り替えが要ります。
よくある質問
Q. ボーナスは、生活防衛資金に入れていいですか
いちばん効率のいい貯め方です。毎月の給料から絞り出すより、ボーナスから一括で移すほうが、生活を変えずに済みます。ただし全額はやめてください。使う分を残さないと、続きません。
Q. 家族の分も含めて計算しますか
はい。世帯の生活費で計算してください。共働きなら「二人同時に失業する確率は低い」ので月数は短めでよく、片働きなら長めにします。上の表を参考にしてください。
Q. 車のローンや奨学金がある場合は
返済額も生活費に含めてください。収入が途絶えても、返済は止まりません。むしろこういう固定の支払いがある人ほど、生活防衛資金は厚めに必要です。(奨学金の借り方・返し方)
Q. 貯まったかどうか、どう管理すればいいですか
専用の口座を1つ作って、そこに入れるだけでいいです。残高を見れば、何ヶ月分あるかすぐわかります。「生活費20万円 × 3ヶ月=60万円」と口座名にメモしておくと、なお迷いません。
Q. 独身で実家、貯金ゼロ。まず何から?
まず「生活費1ヶ月分」を目標にしてください。実家暮らしなら家賃がないぶん、他の人より早く貯まります。ここは有利な条件なので、その期間に一気に作ってしまうのが得策です。
たこ先生の、正直な話
私が生活防衛資金の大切さを実感したのは、貯まったときではありませんでした。
使わずに済んだときです。
数年前、体調を崩してしばらく働けなかった時期があります。幸い、長くはかかりませんでした。でも当時の私には、まとまった現金がありました。
そのとき感じたのは、「助かった」ではなく、もっと静かな感覚でした。
「焦らなくていい」
無理して早く復帰しなくていい。次の仕事を、条件を見ずに決めなくていい。お金があると、判断が急がなくて済むんです。
結局、そのお金はほとんど減りませんでした。でも「あった」という事実だけで、あの数週間の質はまったく違っていたと思います。
生活防衛資金は、増えません。利息もほとんどつきません。数字だけ見れば、じっと眠っているだけのお金です。
でも、これはお金ではなく「時間」を買っているのだと、いまは思っています。慌てて決めなくていい時間を、先に買っておく。
だから私は、この項目だけは「効率が悪いから」という理由で削らないでほしいと思っています。
まとめ|まず1ヶ月分から
- 「3〜6ヶ月分」は誰にも当てはまらない。あなたの生活費 × あなたの事情で決まる
- STEP1/先月の明細を15分見る。非常時に止められる支出は入れない
- STEP2/立場別に月数を決める。実家3ヶ月/一人暮らし3〜6ヶ月/子どもあり6ヶ月/自営業12ヶ月
- 転職を考えているなら+2ヶ月
- 3ヶ月が最低ラインなのは、失業給付が待期7日+給付制限1ヶ月ですぐ出ないから(実際は2〜3ヶ月みておく)
- 置き場所はすぐ出せる普通預金の一択。ただし金利は取りに行っていい
- 全額貯まるまで投資を待たなくていい。8〜9割を防衛資金、1〜2割を積立で並行
- 目標に届いたらそこで止める。超えた分は投資へ
金額を出すと、たいてい思っていたより大きくて、少し気が重くなります。
でも、ゴールは満額ではありません。1ヶ月分です。
今日いちばん効くのは、120万円を貯めることではなく、先月の明細を開いて、自分の生活費を1回だけ計算してみること。それだけで、目標の位置がはっきりします。
※本記事は2026年8月26日時点の公表情報にもとづく一般的な解説であり、特定の金融商品・サービスの利用を推奨するものではありません。消費支出は総務省統計局「家計調査報告(二人以上の世帯)2026年6月分」(2026年8月7日公表)、失業給付の待期期間・給付制限は雇用保険制度の公表内容によります。給付の条件・日数・金額は個々の状況により異なるため、必ずお住まいの地域のハローワークでご確認ください。金利は2026年8月3日時点の楽天銀行の公表内容によります。制度・金利は予告なく変更される場合があります。投資は元本が保証されるものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いします。



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