2026年10月、パートで働く人にとって大きな変更が2つ、同時にやってきます。
② 社会保険の「106万円の壁」が撤廃されます
この2つが重なると、これまでの働き方の常識がひとつ変わります。
調整するのは「年収」ではなく「時間」になります。
- 2026年度の最低賃金と、時給が上がると起きること
- 106万円の壁の撤廃で、基準が何に変わるのか
- 自分の勤務先は、いつから対象になるのか
- 社会保険に入ると、減るものと増えるもの
① 最低賃金は、全国平均1,176円へ

2026年度の最低賃金は、全国加重平均で1,176円。前年度の1,121円から55円(4.9%)の引き上げです。
今年は少し珍しい点があります。地方の引き上げ幅のほうが大きいのです。
- Aランク(埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪)……+54円
- その他41道県……+56円
地域差を縮める方向の答申になっています。発効は10月から順次で、都道府県ごとに日付が異なります。
時給が上がると、何が起きるか
いいことばかりではありません。
同じ時間だけ働いても、年収が自動的に上がります。
たとえば時給1,121円で週20時間働いていた人が、時給1,176円になったとします。年収は約5.7万円増えます。何も変えていないのにです。
扶養の範囲で働きたい人にとっては、これまでどおり働くと壁を超えてしまう可能性が出てきます。だから毎年この時期、シフトを調整する人がいます。
② そして、106万円の壁が撤廃されます

ここが今回の本題です。
これまで、パートの人が社会保険に加入するかどうかは、4つの条件で決まっていました。
| 9月まで | 10月から |
|---|---|
| 週20時間以上 | 週20時間以上 |
| 月8.8万円以上(年106万円) | ← 撤廃されます |
| 2か月を超える雇用見込み | 2か月を超える雇用見込み |
| 学生ではない | 学生ではない |
「月8.8万円以上」という金額の条件が、なくなります。
これが「106万円の壁の撤廃」と呼ばれているものです。
つまり、基準が時間だけになります
10月以降は、月にいくら稼いだかに関係なく、週20時間以上働いていれば加入対象になります。
見るべきなのは金額ではなく、週の労働時間です。
時給が上がった分だけ働く時間を減らす、という調整をしていた方は、考え方を変える必要があります。
ただし、全員が10月からではありません

ここは正確に押さえてください。
2026年10月の時点で対象になるのは、従業員51人以上の勤務先で働く人です。企業規模の条件は、まだ残っています。
| 時期 | 対象になる勤務先 |
|---|---|
| 2026年10月 | 従業員51人以上(賃金要件が撤廃) |
| 2027年10月 | 36人以上 |
| 2029年10月 | 21人以上 |
| 2032年10月 | 11人以上 |
| 2035年10月 | すべての企業(規模の条件がなくなる) |
まず確認すべきなのは、勤務先の従業員数です。51人未満なら、この10月には変わりません。
ただし、いずれは全員が対象になります。2035年には規模の条件そのものがなくなる予定です。
130万円の壁も、実は変わっていました
あまり話題になっていませんが、2026年4月からもうひとつ変更がありました。
扶養に入れるかどうかの判定が、「実際の収入」から「労働契約に基づく収入見込み」に変わっています。
これまでは、繁忙期に残業して結果的に130万円を超えると、扶養から外れることがありました。これからは契約上の年収で判定されるため、一時的に超えただけで即座に外れることはなくなります。
働く側にとっては、安心して繁忙期に働ける方向の変更です。
社会保険に入ると、どうなるのか

ここを「損」とだけ考えている方が多いので、両面を書きます。
減るもの:毎月の手取り
厚生年金と健康保険の保険料がかかります。目安は年収の15%前後(労使折半後の本人負担分)です。
年収120万円なら、年間で18万円ほど。手取りは月1万5,000円くらい減る計算になります。
これは、はっきり減ります。ごまかしようがありません。
増えるもの:4つあります
- 将来の厚生年金……国民年金に上乗せされ、一生涯もらえます
- 傷病手当金……病気やケガで働けないとき、給与の約3分の2が最長1年6か月
- 出産手当金……産休中に給与の約3分の2
- 障害厚生年金・遺族厚生年金……万一のときの保障が厚くなります
とくに傷病手当金は、扶養のままでは受け取れないものです。これがあるかないかで、働けなくなったときの生活はまったく違います。
損か得かは、あと何年働くかで決まります
でも長く働くほど、厚生年金は一生ぶん積み上がります。ここが判断の分かれ目です。
40代・50代でこれから10年、15年と働く見込みがあるなら、加入して厚生年金を増やすほうが有利になりやすい。逆に「あと2年で辞める」なら、手取り減のほうが大きく感じるでしょう。
年齢と、あと何年働くか。この2つで答えが変わります。
で、どうすればいいのか
やることは3つです。
1. 勤務先の従業員数を確認する
51人以上かどうか。ここが最初の分かれ道です。分からなければ、勤務先に聞いてください。10月から対象になるなら、会社から説明があるはずです。
2. 自分の週の労働時間を数える
週20時間以上かどうか。これが新しい基準です。年収ではありません。
3. どちらを選ぶか決める
扶養の範囲に留まりたいなら、週20時間未満に抑える。時給が上がっても、時間で調整することになります。
加入してもいいと考えるなら、時間を気にせず働けるようになります。手取りは減りますが、その分だけ働く時間を増やす選択もできます。
税金の壁は、また別の話です
ここまでは社会保険の話でした。税金の壁は別に存在します。
- 住民税……93万〜110万円(自治体によります)
- 所得税……123万円(2025年の改正で103万円から引き上げ)
- 配偶者特別控除……160万円台から段階的に減っていきます
金額は制度改正でたびたび変わり、家族構成によっても違います。正確な金額は、お住まいの自治体や勤務先、税務署で必ず確認してください。
ふるさと納税やiDeCoを使っている場合も計算が変わります。ふるさと納税についてはこちらの記事にまとめました。
正直に言うと
この改正を調べていて、いちばん引っかかったのは「106万円の壁が撤廃される」という言葉のほうでした。
撤廃と聞くと、壁がなくなって働きやすくなるように聞こえます。でも実際に起きるのは、壁が金額から時間に移動しただけです。なくなったわけではありません。
むしろ、これまで「月8.8万円未満」で調整していた人にとっては、週20時間以上働いていれば加入対象になるので、対象が広がる変更です。
ただ、私はこの方向自体は悪くないと思っています。
金額で線を引くと、その手前で全員が止まります。能力ではなく制度で働き方が決まってしまう。それを直そうとしている改正だと理解しています。
とはいえ、当面は手取りが減る人が出ます。それも事実です。
だからこそ、10月が来る前に、自分がどちらなのかを確かめておいてください。知らないまま迎えると、11月の給与明細を見て驚くことになります。
まとめ|確認するのは、金額ではなく時間です
- 最低賃金は全国平均1,176円(+55円)。10月から順次発効
- 同じ時間だけ働いても、年収は自動的に上がります
- 10月から「月8.8万円以上」の条件が撤廃。基準は週20時間だけに
- ただし2026年10月時点の対象は従業員51人以上の勤務先
- 社会保険は手取りが減るが、厚生年金・傷病手当金が増える
- 損得はあと何年働くかで変わります
今日やることは、ひとつだけです。
自分の週の労働時間を数えてみてください。20時間を超えているかどうか。それが、10月からのあなたの分かれ道になります。
※本記事は2026年8月時点で公表されている情報にもとづきます。最低賃金の発効日は都道府県ごとに異なります。社会保険の加入条件や扶養の判定は、勤務先の状況や個別の事情によって変わります。正確な取り扱いは、勤務先・年金事務所・お住まいの自治体にご確認ください。



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