火災保険は、火事のための保険ではありません。
もちろん火事も対象です。でも実際にこの保険が効くのは、台風で屋根がめくれたとき、雹(ひょう)で車庫が割れたとき、豪雨で床上浸水したとき——そちらのほうが、圧倒的に多いのです。
そしてもうひとつ、知らないと本当にまずい話があります。
「火災」保険なのに、です。ここを埋めるには、地震保険が要ります。
台風と豪雨の季節です。この記事を読み終わったら、保険証券を1枚出してきてください。確認するのは5つだけです。
- 火災保険が本当にカバーしている範囲
- 地震による火災が対象外である理由
- 地震保険でいくら戻るのか(全額は出ません)
- 保険料が上がり続けている背景と、保険期間が5年になったこと
- 今日、証券を出して確認する5つ
- 「保険金で修理できます」という勧誘への注意
火災保険が、本当にカバーしているもの
契約内容によって差はありますが、住宅の火災保険はおおむねこの範囲を扱います。
| 補償 | たとえば、こんなとき |
|---|---|
| 火災・落雷・破裂・爆発 | もらい火、落雷で家電が壊れた |
| 風災・雹災・雪災 | 台風で屋根材が飛んだ、雨樋が壊れた、カーポートが割れた |
| 水災 | 豪雨で床上浸水した、土砂崩れで家が壊れた |
| 水濡れ・盗難・破損など | 上階からの漏水、空き巣の被害(契約による) |

黄色を付けた2行が、この記事の主役です。
台風・豪雨・雪。日本の住宅にいちばん現実的に襲いかかるのは、火事ではなく気象です。
だから本当は「住まいの災害保険」と呼んだほうが実態に合っています。「火災保険」という名前が、誤解のもとになっているんです。
【重要】地震による火災は、火災保険では補償されません
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
財務省は、地震保険の対象をこう定義しています。
——つまり、これらは地震保険の側にあるということです。
裏返すと、こうなります。
- 地震で家が倒れた → 火災保険では出ません
- 地震で火が出て、家が焼けた → 火災保険では出ません
- 津波で流された → 火災保険では出ません
「火災」と名前が付いているのに、地震が原因の火災は対象外。ここを勘違いしたまま何十年も払い続けている方が、かなりいらっしゃいます。

※契約によっては「地震火災費用保険金」として、保険金額の数%程度が支払われる特約が付いていることがあります。ただし、これは損害を埋める額ではありません。ご自身の証券でご確認ください。
地震保険の中身|正直に言うと、全額は出ません
では地震保険に入ればいいのかというと、そこも正直に書いておきます。
① 火災保険とセットでしか入れません
財務省の説明では、「地震保険は、火災保険に付帯する方式での契約となりますので、火災保険への加入が前提」とされています。地震保険だけの単独加入はできません。
② 金額は、火災保険の30〜50%まで
上限は、建物5,000万円・家財1,000万円です。
つまり、2,000万円の火災保険に入っていても、地震保険は最大でも1,000万円。家を建て直せる金額は、そもそも設計に入っていません。
③ しかも、損害の程度で4段階に分かれます
| 損害の区分 | 支払われる割合 |
|---|---|
| 全損 | 保険金額の100% |
| 大半損 | 保険金額の60% |
| 小半損 | 保険金額の30% |
| 一部損 | 保険金額の5% |

「地震保険に入っているから大丈夫」ではありません。1,000万円の契約でも、一部損なら50万円です。
じゃあ、意味がないのか?
いいえ。ここは誤解しないでください。
住むところを借りる、家財を買い直す、しばらく働けない間の生活費にする。生活防衛資金の巨大版だと考えると、役割がはっきりします。
そして日本の地震保険は、民間だけで支えているわけではありません。財務省の資料によれば、政府が再保険を引き受けており、政府の支払限度額は11兆5,553億円、民間と合わせた総支払限度額は12兆円という規模で設計されています。
付帯率は70.4%。でも、世帯で見ると
損害保険料率算出機構の公表によると、2024年度の地震保険付帯率は全国平均70.4%でした。前年度は69.7%で、2003年度以降22年連続の増加、統計開始以来の過去最高です。
ただし、この「付帯率」は火災保険に入っている人のうち、地震保険も付けている割合です。
火災保険自体に入っていない世帯まで含めた「世帯加入率」で見ると、数字はもっと下がります。
つまり——まだ地震保険を持っていない家のほうが、実は多いということです。
保険料は、上がり続けています
ここは知っておいてください。火災保険は「一度入ったら終わり」の商品ではなくなりました。
参考純率が、繰り返し引き上げられています
保険料のもとになる「参考純率」は、損害保険料率算出機構が算出しています。この参考純率が2019年・2021年・2023年と続けて引き上げられ、各社の保険料に反映されてきました。
2023年6月に届け出られた改定は、報道等によれば全国平均で13.0%の引き上げで、多くの保険会社が2024年10月から反映しています。
背景はシンプルです。自然災害の支払いが増え、修理費と建築費が上がった。それだけです。
保険期間が、最長5年になりました
災害リスクの先行きが読めず、長期の料率を固定しづらくなったためです。
これは家計にとって、地味に大きな変化です。5年ごとに、必ず更新の判断が来るということですから。
裏を返せば、5年ごとに見直すチャンスが来るということでもあります。同じ補償でも会社によって保険料はかなり違うので、更新の案内が来たら必ず比べてください。
水災の保険料が、住む場所で変わるようになりました
2024年10月から、水災の料率が市区町村ごとに細分化されました。水害リスクの低い地域は安く、高い地域は高くなります。
だからこそ、次の確認が要ります。
今日やること|証券を出して、5つ確認する
難しいことはしません。保険証券(または契約内容のお知らせ)を1枚出してきて、ここだけ見てください。
保険料を下げるために外している契約が多い項目です。ハザードマップを見て、外していい地域かどうかを確認してください。
② 地震保険は付いていますか。金額はいくらですか
付いていても、火災保険の30%で設定されていることがあります。
③ 保険期間の満了日はいつですか
更新月が見直しのタイミングです。カレンダーに入れてください。
④ 建物の保険金額は、いまの建築費に合っていますか
建築費が上がっているので、古い契約は「足りない」側にずれていることがあります。住宅ローンの残高ではなく、建て直すのに必要な額で考えてください。
⑤ 家財の補償は付いていますか
建物だけ入っていて家財が空、という契約はよくあります。浸水したとき、実際に困るのは家財です。

この5つを確認して、必要なら更新時に直す。作業としてはそれだけです。
保険は固定費の中でも、見直しの効果が長く続く項目です。生命保険の見直しと同じ日にやってしまうのが効率的です。
マンションの方は、ここだけ違います
分譲マンションの場合、話が少し変わります。
- ご自身の火災保険が守るのは「専有部分」(部屋の中)です
- 共用部分(エントランス・廊下・外壁など)は、管理組合が入っている保険の担当です
- だから個人で建物に大きな保険金額を掛ける必要はなく、家財の比重が高くなります
そしてマンションで圧倒的に多い事故が、これです。
このとき効くのは火災保険本体ではなく、個人賠償責任の特約です。付いているか、証券で確認しておいてください。自転車事故など日常のトラブルにも使えます。
戸建てでもマンションでも、共通しているのは「証券を見ないと分からない」ということです。家計の全体像を整えるとき、保険はいちばん後回しになりやすいのですが、ここは1回開くだけで終わります。
見落としがちな話|請求できるのに、していない
意外と多いのが、これです。
- 台風のあと、雨樋が曲がっていたけれど自費で直した
- カーポートの屋根が割れたけれど、保険の対象だと思わなかった
- 雪でアンテナが倒れたけれど、そのままにした
風災・雪災の補償が付いていれば、これらは請求できる可能性があります(免責金額や契約条件によります)。
数年前の台風の被害でも、まだ間に合うことがあります。心当たりがあれば、まず保険会社に連絡してみてください。
【注意】「保険金で修理できます」という勧誘
そしてここは、必ず書いておかなければいけません。
台風シーズンになると、「火災保険を使えば自己負担なしで修理できます」と訪問してくる業者が増えます。国民生活センターが繰り返し注意喚起しているトラブルです。
- 保険金の請求は、加入者ご自身で行う
- 申請サポートを受ける前に、まず損害保険会社に連絡する
- 加入している保険の対象外の損害については、勧誘に乗らない
- 虚偽の請求は、詐欺になりうる行為です
実際に起きているのは、こういうことです。経年劣化の傷みを「台風のせい」にして請求させる。保険金が下りなかったのに高額なキャンセル料を請求される。手数料として保険金の3割〜4割を持っていかれる。
本当に被害があったなら、自分で保険会社に電話すれば済む話です。間に業者を挟む必要は、ありません。
正直な注意点
保険料は毎年かかる固定費です。地震保険は地域と建物の構造で保険料が大きく変わりますし、賃貸なら家財だけで十分なこともあります。大事なのは「自分の契約が、何を守っていて何を守っていないか」を知ることです。
もうひとつ。保険で全部を守ろうとしないでください。
保険は「起きたら家計が壊れること」に対して掛けるものです。数万円で済む損害まで保険で埋めようとすると、保険料のほうが高くつきます。屋根の修理や設備の交換のような「いつか必ず来る出費」は、保険ではなく特別費で持っておくほうが確実です。
よくある質問
Q. 賃貸でも火災保険は必要ですか?
賃貸の場合は、契約時に加入する「借家人賠償責任保険」とセットの家財保険が中心になります。建物は大家さんの持ち物なので、守るのは自分の家財と、大家さんへの賠償です。不動産会社に勧められたものをそのまま更新している方が多いですが、内容は比べられます。
Q. 水災の補償は外していいですか?
お住まいの地域のハザードマップ次第です。高台のマンション上層階なら外す判断もありますが、「保険料が高いから」だけで外すのは危険です。土砂災害も水災の枠に入ることが多いので、山が近い地域は特に慎重に。
Q. 地震保険料は安くなりませんか?
地震保険の保険料は、どの保険会社で入っても同じです(政府が関わる制度のため)。ただし建物の免震・耐震性能に応じた割引があります。建築年や耐震等級の証明書が出せる場合は、必ず申告してください。所得税の地震保険料控除もあります。
Q. 保険料を下げる方法はありますか?
会社を比べる、補償を必要な範囲に絞る、免責金額を引き上げる、長期契約でまとめて払う——このあたりです。ただし補償を削って安くするのは、保険の意味を削ることでもあるので、削っていいのは「起きても自力で払える損害」だけにしてください。
たこ先生の、正直な話
私はずっと、火災保険を「火事の保険」だと思っていました。
だから正直、どうでもいい保険だと思っていたんです。うちが火事になる確率なんて、そう高くないだろう、と。
考えが変わったのは、台風のあとでした。
近所の家の雨樋が壊れていて、その方が「保険で直せるって聞いて連絡したら、全部おりた」と話しているのを聞いたんです。
私はそのとき初めて、自分の証券を出しました。
そして——水災が外されていることに、そこで初めて気づきました。
入るときに「ここは川から遠いので」と説明されたのを、私はまったく覚えていませんでした。何年も、自分が何に守られているのかを知らないまま払っていたわけです。
保険は、入った日がゴールではありません。証券を1回開くだけで、その保険は初めて自分のものになります。
まとめ|今日は、証券を出すだけでいい
- 火災保険の主役は火事ではなく風災・雹災・雪災・水災
- 地震が原因の火災は、火災保険では補償されない(地震保険の領域)
- 地震保険は火災保険とセットのみ。金額は火災保険の30〜50%、上限は建物5,000万円・家財1,000万円
- 支払いは全損100%・大半損60%・小半損30%・一部損5%の4区分
- 2024年度の付帯率は70.4%(22年連続増加・過去最高)
- 参考純率は2019・2021・2023年と連続で引き上げ。保険期間は最長5年に
- 今日やるのは証券を出して5つ確認するだけ
- 「保険金で修理できます」の勧誘には乗らず、自分で保険会社に電話する
火災保険は、家計の中でいちばん「入りっぱなし」になりやすい保険です。何年も見ていない方が、たぶん多数派です。
でも、この5年で保険料も補償の考え方も変わりました。いまの契約が、いまの災害に合っているとは限りません。
台風が来る前に、証券を1枚。それだけで十分です。
※本記事は2026年8月12日時点の公表情報にもとづく一般的な解説であり、特定の保険商品の加入・解約を推奨するものではありません。補償範囲・免責金額・特約の有無は保険会社および契約ごとに異なります。参考純率の改定率や各社の保険料への反映時期は会社により異なります。ご自身の契約内容については、必ず保険証券および保険会社にご確認ください。制度の詳細は財務省・損害保険料率算出機構の公式情報をご参照ください。


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