先週まで160円台だったドル円が、9月4日には155円台をつけました。1週間で5円です。
オルカンやS&P500を積み立てている方は、今週あたり評価額が減っているはずです。そして、こう思ったのではないでしょうか。
「円高になったんだから、いったん積立を止めたほうがいいのでは?」
円高は、これから買う人にとっては値下げです。積立をしている人は、まさに「これから買う人」にあたります。
ただ、そう言われても納得しにくいと思います。なぜそうなるのかを、仕組みから説明します。あわせて「株高・株安・円高・円安」の関係も1枚に整理しました。
- いま為替に何が起きているのかと、その理由
- 円高・円安の意味(数字が下がるのに「高い」の謎)
- 株と為替の組み合わせ4つと、それぞれの効き方
- 円高で評価額が減る仕組みと、これから買う分に起きること
- 為替を気にしなくていいようにするための設計
いま、何が起きているのか

| 時点 | ドル円 |
|---|---|
| 8月末 | 160円台 |
| 9月2日 | 158.72円 |
| 9月3日 | 156円台 |
| 9月4日 | 155.34円 |
きっかけは日銀の追加利上げ観測です。9月の金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げ、1.25%にする方向で調整に入ったと報じられました。
金利が上がると、その国の通貨は買われやすくなります。預けておくだけで増える度合いが大きくなるからです。日本の金利が上がる見込みが強まったので、円が買われました。
市場の見通しでは、年末までにさらに円高が進むという予想もあります。ただし予想は予想です。ここは後で触れます。
そもそも、円高・円安とは何か
ここを曖昧にしたまま投資している方は、けっこう多いと思います。
数字が下がるのに「高い」のはなぜか
160円から155円になると円高です。数字は小さくなっているのに「高い」と言うので、混乱します。
1ドルという商品に、160円の値札が付いていたのが155円になった。安く買えるようになったということは、払うほうのお金(円)の価値が上がったということです。
スーパーでりんごが160円から155円に値下がりしたら、同じ財布でより多く買えます。それと同じです。ドルが安くなった=円が強くなった。これが円高です。
| 数字 | 円の力 | 輸入品 | 外国株の評価額 | |
|---|---|---|---|---|
| 円高 | 下がる(160→155) | 強くなる | 安くなる | 減って見える |
| 円安 | 上がる(155→160) | 弱くなる | 高くなる | 増えて見える |
この数年、値上げが続いた原因のひとつが円安でした。円高は、家計にとっては味方の面もあります。
株と為替、組み合わせは4つだけ
外国株の投資信託を持っている場合、値動きの要因は「株価」と「為替」の2つです。だから組み合わせは4通りしかありません。

| 組み合わせ | 評価額 | 説明 |
|---|---|---|
| 株高 × 円安 | ◎ いちばん増える | 追い風が2つ |
| 株高 × 円高 | ○ 差し引きプラス | 増えるが、為替が打ち消す |
| 株安 × 円安 | △ 差し引きマイナス | 減るが、為替が支える |
| 株安 × 円高 | × いちばん減る | 逆風が2つ |
ここで気づいてほしいことがあります。為替は、4つのうち半分にしか関係していません。残り半分は株価の話です。
「円高だから損した」と感じるとき、実際には株価のほうが効いていることも多いんです。2つを分けて見ないと、原因を取り違えます。
円高で評価額が減る、その仕組み
数字で見ると、あっけないほど単純です。

100ドル分の株を持っているとします。
- 1ドル160円のとき……16,000円
- 1ドル155円のとき……15,500円
持っている株は1株も減っていません。それでも円に直すと500円減ります。
オルカンやS&P500の投資信託が下がって見えるのは、多くの場合これが理由です。中身が悪くなったわけではありません。
逆に言えば、アメリカに住んでいる人にとっては何も起きていないということです。円高は、日本円で見ている人だけの現象です。
でも、これから買う分には逆のことが起きます
ここが、この記事のいちばん大事な部分です。

毎月1万円を積み立てているとします。その1万円で買える量は、こうなります。
| レート | 1万円で買えるドル |
|---|---|
| 1ドル160円 | 62.5ドル分 |
| 1ドル155円 | 64.5ドル分 |
3.2%多く買えます。
円高は、これから買う人にとっては値下げセールと同じです。同じ金額で、より多くの株を仕込めます。
つまり円高は、味方でいてくれる期間のほうが長いということになります。
毎月3万円を20年積み立てるなら、総額720万円。まだ2年目なら、投じたのは72万円で、残り648万円はこれから買います。どちらが大事かは、計算するまでもありません。
それでも積立をやめてはいけない理由
タイミングを当てるのは、プロでも難しい
「円高が終わってから買い直す」という判断には、2回当てる必要があります。売るタイミングと、買い直すタイミングです。
1回でも難しいものを、2回連続で当てる。これを毎回やり続けるのは、現実的ではありません。
実際、いま出ている専門家の見通しも「年末に146円」といった予想であって、確定した話ではありません。プロの予想も、外れるときは大きく外れます。
やめると、戻るときも逃します
為替も株価も、動くときは短期間に一気に動きます。下がった局面で止めていると、その直後の反発をまるごと逃すことになります。
積立の強みは、上がっても下がっても買い続けることで平均取得価格をならせる点にあります。止めた瞬間に、その仕組みが機能しなくなります。
為替を気にしなくていいように、設計する
ここが、この記事で本当に伝えたいことです。
毎回悩まなくて済むように、最初に設計してしまう。それが、いちばん確実な方法だと思っています。
1. 自動で引き落とされる状態にする
クレジットカード積立や銀行の自動引き落としにしておけば、毎月「買うかどうか」を判断する場面そのものがなくなります。
判断の機会が減れば、迷う回数も減ります。仕組みで解決するのがいちばん楽です。
2. 商品を1本か2本に絞る
全世界株か米国株のインデックスファンド。迷う材料が少ないほど、続きます。
▶︎ 新NISAで結局どれを買う?2026年版|オルカンの62.8%はアメリカでした
▶︎ オルカンvsS&P500どっちを選ぶ?2026年版|違い・リターン・迷わない選び方
3. 評価額を見る頻度を、先に決める
毎日見ると、毎日不安になります。年に1回か2回で十分です。
20年運用するつもりの資産を、1週間の値動きで判断する必要はありません。
4. 為替ヘッジは、基本的にいりません
「為替ヘッジあり」の投資信託を選べば為替の影響を抑えられますが、ヘッジにはコストがかかります。日米の金利差が大きいほど、そのコストは重くなります。
長期で持つなら、コストを払い続けるより為替の上下は行ったり来たりするものとして受け入れるほうが、結果的に有利になりやすいと考えています。
よくある質問
Q. 円高のうちに、まとめて買ったほうが得ですか
結果的にそうなる可能性はあります。ただし「ここが底だ」と判断できる根拠がないのが問題です。155円が底かもしれませんし、146円まで進むかもしれません。
余裕資金があるなら一部を追加するのは選択肢ですが、積立の設定を変えてまでやることではないと思います。
Q. いま持っている分を売って、円安に戻ってから買い直せば?
おすすめしません。売った時点で利益が確定して課税対象になりますし(NISA以外の場合)、買い直すタイミングを当てる必要が出てきます。
それに、NISAの非課税枠は売ってもその年のうちには戻りません。枠を無駄づかいすることになります。
Q. 円高がこのまま何年も続いたらどうなりますか
その間は、安く買い続けられます。そして将来円安に戻ったとき、その安く買った分がまとめて効いてきます。
怖いのは円高そのものではなく、円高のときに買うのをやめてしまうことです。
Q. 生活費に手をつけてまで続けるべきですか
それは違います。生活防衛資金を削ってまで積み立てるのは、順番が逆です。
▶︎ 生活防衛資金は結局いくら?2026年版|「3〜6ヶ月分」が当てはまらない人もいます
正直に言うと
私は、為替の予想をしません。できないからです。
いま「年末146円」という見通しが出ていますが、これは去年の予想が当たったから信頼できる、という類のものではありません。為替はプロが束になっても外し続けている領域です。
当てられないものについて考える時間は、私にとっては損失です。だから考えなくて済むように設定を組んで、あとは見ないようにしています。
そのうえで、ひとつだけ言いたいことがあります。
5円の円高で夜眠れなくなるなら、投じている額が自分の許容度を超えています。そのときに減らすべきは積立ではなく、金額のほうです。
月3万円で不安なら、月1万円に下げる。ゼロにするより、ずっといい判断です。続けられる金額に調整することと、やめることは、まったく別のことです。
▶︎ 新NISAを満額投資できている人は何%?答えは5.7%でした|1,800万円を焦らなくていい理由
まとめ
- 円高=円の価値が上がった(数字は下がるが「高い」)
- 値動きの要因は株価と為替の2つ。組み合わせは4通り
- いま持っている分は減って見える(中身は減っていない)
- これから買う分は3.2%多く買える(155円と160円の比較)
- 積立中の人は、これから買う額のほうが多い
- だから答えは「続ける」
やることは、何もしないことです。
設定を変えない。評価額を毎日見ない。ニュースで為替の数字を見ても、それは自分の20年後とは関係がないと思っておく。
それができるように最初に設計しておくのが、いちばん現実的な対策だと思います。
為替レートは日々変動します。この記事に書いた155円という数字も、読まれている頃には変わっているはずです。そして、それこそがこの記事の言いたいことでもあります。個別の投資判断はご自身の責任でお願いします。
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