先日、軽自動車の記事で「車は値切るより、値落ちしない車を選ぶほうが効く」と書きました。
今回はその普通車版です。ただし——普通車には、軽にはない事情があります。
先に、この記事でいちばん伝えたい事実を置きます。
2位も同じです。偶然ではなく、まったく同じ理由から起きています。
「高く売れる車」を選ぶということは、「他人にとっても価値が高い車」を家の前に置くということでもあります。ここまで書いてある記事は、あまり見かけません。
- リセールバリューが高い普通車と、その残価率の目安
- なぜ、その車たちは値落ちしないのか(理由は海外にあります)
- リセール上位=盗難上位という、セットで来るリスク
- 逆に値落ちしやすい車の特徴
- 買うときにリセールを上げる4つ
- そして正直に——リセールで車を選ぶべきではない理由
おさらい|車の負担は、売るときに確定します
まず考え方だけ、短く。
400万円の車を買って5年後に200万円で売れたら、車両ぶんの負担は200万円。同じ400万円でも100万円でしか売れなければ、負担は300万円です。
差は100万円。値引き交渉でこの差をつけるのは、まず不可能です。
リセールが高い普通車
買取店の査定データをもとにした残価率の目安です。3年落ちの水準で並べます。
| 車種 | 3年落ちの残価率(目安) |
|---|---|
| トヨタ ランドクルーザー(300系) | 100%超 |
| トヨタ クラウン(クロスオーバー) | 90〜100%超 |
| トヨタ アルファード(40系) | 80〜95% |
| レクサス LBX/NX | 75〜90% |
| トヨタ RAV4 | 75〜85% |
| トヨタ ハリアー | 70〜80% |
※買取店の査定実績にもとづく目安です。リセール率は調査主体・車両状態・グレード・時期によって大きく変わるため、幅で記載しています。実際の査定額は必ず複数社でご確認ください。

驚くのは上の2つです。3年乗って、買った値段とほぼ同じか、それ以上で売れることがある。
ちなみにハリアーが70〜80%と、上位のなかでは平均的なのが面白いところです。人気は非常に高いのですが、そのぶん中古市場に出回る台数も多いので、需給が緩みやすいのです。
「人気があるから高く売れる」とは限りません。効くのは人気ではなく、需要と供給のバランスです。
なぜ、この車たちは値落ちしないのか
理由は4つに整理できます。

① 海外での需要が、価格を支えている
これがいちばん大きい理由です。
ランドクルーザーは、中東をはじめとした地域で「壊れない車」として絶大な信頼があります。日本で使われた中古車が海外へ流れるルートが確立しているため、国内の人気が落ち着いても、海外からの引き合いが価格を支え続けます。
つまりこれらの車の値段は、日本の中古車市場だけで決まっていません。
② 壊れにくく、部品が手に入る
海外で売れるための前提条件です。現地で修理できない車は、そもそも輸出されません。
③ 新車の納期が長く、供給が限られている
「いま欲しい人」が新車を待てないと、中古に流れます。すると中古の相場が上がります。納期の長さが、そのままリセールを押し上げている面があります。
④ 定番色とハイブリッド
白・黒・シルバーは、どの国でも売りやすい色です。またハイブリッドは燃費の良さから中古でも人気が高く、同じ車種でもガソリン車より有利になりやすいです。
【重要】リセール上位は、盗難ワースト上位でもあります
ここからが本題です。
日本損害保険協会が公表している2024年の自動車盗難の実態調査から、車種別のワースト順位です。
| 順位 | 車種 | 件数(構成比) |
|---|---|---|
| 1位 | ランドクルーザー | 688件(27.5%) |
| 2位 | アルファード | 289件(11.6%) |
| 3位 | プリウス | 235件(9.4%) |
| 4位 | レクサス LX | 109件(4.4%) |
| 5位 | レクサス RX | 89件(3.6%) |
| 6位 | クラウン | 62件(2.5%) |
※日本損害保険協会「自動車盗難事故実態調査」(2024年)より。ランドクルーザーは4年連続で車名別ワースト1位です。警察庁の統計でも同様の傾向が続いています。

先ほどのリセール表と、見比べてみてください。
リセール1位のランドクルーザーが盗難1位、リセール3位のアルファードが盗難2位。クラウンもレクサスも両方に入っています。
理由は、まったく同じです。「海外で高く売れるから」。
盗む側にとっても、リセールが高い車ほど価値があります。あなたが「高く売れる」と思って選んだ基準は、そのまま盗む側の選定基準でもあるということです。
これは家計にも、はね返ります
盗難リスクが高い車を持つと、こういう出費が乗ってきます。
- セキュリティ装置(後付けの警報機・ハンドルロック・OBDポート対策など)
- 車両保険料(盗難被害の多い車種は、保険料が高くなる傾向があります)
- 駐車環境(青空駐車を避けるため、より高い駐車場を選ぶことも)
- そして精神的なコスト。旅行先で「大丈夫かな」と気にする時間は、金額に表れません
リセールで得た数十万円が、この対策費でいくらか相殺されます。「リセールが高い=家計に有利」と単純には言えないのは、このためです。
車両保険の考え方は火災保険と同じで、「起きたら自力で立て直せない損害」にだけ掛けるのが基本です。数百万円の車が消えるのは、まさにその領域にあたります。生活防衛資金で買い直せない金額なら、迷わず付けてください。
逆に、値落ちしやすい車の特徴
| 特徴 | 理由 |
|---|---|
| 個性的な色・派手なカスタム | 次に買う人が限られる |
| モデルチェンジ直前の旧型 | 新型が出た瞬間に相場が落ちる |
| 多くの欧州車 | 維持費・修理費が読みにくく、買い手が慎重になる |
| セダン・ステーションワゴン | 国内の需要がSUVとミニバンに移っている |
| 過走行・整備記録なし | 状態が読めないぶん、査定で大きく引かれる |
とくに電子制御の多い欧州セダンは、走行距離によるマイナス評価が大きくなりやすいと言われます。
ただし誤解しないでください。これは「買ってはいけない」という意味ではありません。値落ちが大きい=中古で買うときは安く手に入る、ということでもあります。
買うときにできる、リセールを上げる4つ
どの国でも売りやすい定番色です。好きな色があるなら、そちらを選んでください。ただし差が出ることは知っておく。
② グレードは、中間〜上位を選ぶ
最廉価グレードは装備が足りず、中古で敬遠されがち。最上位は高すぎて元が取りにくい。真ん中が安定します。
③ モデルチェンジの直前に買わない
新型発表の直後は、旧型の相場が一気に下がります。逆にフルモデルチェンジ直後の新型は、リセールが安定しやすいです。
④ 整備記録簿を、必ず残す
お金がかからず、いちばん確実に効きます。点検の記録がある車は、査定で安心して評価されます。

正直な注意点|リセールで車を選ばないでください
ここまで書いてきて、ひっくり返すようですが。
リセールが効くのは、「同じくらい欲しい車が2つあって、迷ったとき」です。そこで初めて決め手になる。最初からリセールで絞ると、乗りたくない車に5年乗ることになります。
理由をもう2つ。
① 車両価格そのものが高い。リセール上位の車は、そもそも新車価格が高額です。残価率が高くても、手元から出ていく金額の絶対値は大きい。500万円の車が3年後に450万円で売れても、その3年間は500万円を車に預けていることになります。
② リセールは、為替と海外事情で変わります。海外需要に支えられている以上、円高になれば輸出の妙味は減り、相場は下がります。輸出先の法規制が変わることもあります。いまのリセール率は、5年後を保証しません。
だから最終的には、こう考えるのが健全だと思います。
予算の範囲で、乗りたい車を選ぶ。同じくらい迷ったら、リセールで決める。それで十分です。
よくある質問
Q. リセールがいい車を、ローンで買うのはどうですか?
残価率が高くても、ローンの金利は残高全体にかかります。「どうせ高く売れるから」で予算を上げると、月々の負担が重くなります。判断は住宅ローンと同じで、月々ではなく支払総額で見てください。
Q. 何年で乗り換えるのがいちばん得ですか?
値落ちがいちばん大きいのは最初の3年です。そのため「3〜5年で乗り換える人」ほどリセールの恩恵が大きく、逆に10年以上乗りつぶす人にはほとんど関係ありません。乗りつぶす前提なら、リセールより故障の少なさと維持費で選ぶほうが合理的です。
Q. 盗難対策は、どこまでやるべきですか?
まずは物理的に目立つ対策(ハンドルロックなど)が効果的と言われます。盗む側は「時間がかかる車」を避けるからです。そのうえで車両保険に盗難が含まれているかを証券で確認してください。含まれていない契約もあります。
Q. 中古で買うなら、どのタイミングが得ですか?
値落ちが一段落した3年落ち・低走行が、数字の上では効率的です。ただしリセール上位の車は3年落ちでも高いので、「安く買える」のは値落ちの大きい車のほうです。ここは目的次第になります。
たこ先生の、正直な話
この記事を調べていて、いちばん考えさせられたのがこの一致でした。
高く売れる車のランキングと、盗まれる車のランキングが、ほぼ同じ。
言われてみれば当たり前です。価値があるから高く売れて、価値があるから狙われる。同じコインの裏表でしかありません。
でも、リセールの記事にはたいてい前半しか書かれていません。
私はこれを見て、「得をする話には、たいてい裏側がある」という当たり前を思い出しました。高金利の商品にはリスクがあり、還元率の高いカードには条件があり、値落ちしない車には盗難リスクがある。
裏側を知ったうえで選ぶなら、それは立派な判断です。怖いのはリスクそのものではなく、片面だけ見て決めることだと思っています。
まとめ|高く売れる車は、狙われる車でもある
- リセール上位はランクル・クラウン・アルファード・レクサス・RAV4あたり。3年落ちで80〜100%超も
- 理由は海外の輸出需要。日本の相場だけで決まっていない
- 人気=高リセールではない。ハリアーは供給が多く70〜80%にとどまる
- リセール上位=盗難ワースト上位。ランクルは盗難の27.5%を占める
- セキュリティ・車両保険・駐車環境の費用で、得はいくらか相殺される
- 買うときは定番色・中間グレード・モデルチェンジ直後・整備記録
- リセールは1番目の基準にしない。迷ったときの決め手にとどめる
車は、家の次に大きな買い物です。だからこそ出口まで見て決める価値があります。
ただ、出口だけを見て入口を決めると、乗っている5年間が楽しくありません。数字は判断を助ける道具であって、判断そのものではない。そこだけは、忘れないでいてください。
そして車を持つと決めたら、維持費は毎月の家計に、車検は特別費に、きちんと組み込んでおいてください。
なお、いま乗っている車があるなら、今日いちばん早く効くのは任意保険の見直しです。同じ補償でも会社によって年に数万円変わります。車を買い替えなくてもできる、固定費の中でも効果の大きい一手です。
※本記事は2026年8月18日時点の公表情報にもとづく一般的な解説であり、特定の車種・販売店・保険商品の利用を推奨するものではありません。リセールバリューは調査主体・車両状態・グレード・走行距離・時期・為替により大きく変動します。掲載した残価率は買取店の査定実績にもとづく目安であり、実際の査定額を保証するものではありません。盗難統計は日本損害保険協会「自動車盗難事故実態調査」(2024年)によります。保険の補償内容は契約により異なりますので、必ず保険証券および保険会社にご確認ください。



コメント