「金利が上がったらしいけど、うちの返済額、変わってないから大丈夫」
——もしそう思っているなら、この記事はあなたのために書きました。
返済額が変わっていないことと、負担が増えていないことは、まったく別の話だからです。変動金利には、それを見えなくする仕組みがあります。
正直に打ち明けると、私(たこ先生)も長いあいだ「変動金利は安いから正解」くらいにしか考えていませんでした。仕組みをちゃんと調べたのは、金利が動き始めてから。調べてみて驚いたのは、返済額が据え置かれている間も、利息はしっかり増えているという事実でした。
2026年6月、日銀は追加利上げを決定し、政策金利は1.00%になりました。1995年以来、およそ31年ぶりの水準です。「金利のある世界」が、本当に戻ってきました。
この記事では、いま何が起きていて、返済額はいくら変わりうるのか、そして家計として今日から何をすればいいのかを、正直に整理します。
- 2026年、金利に何が起きたのか(政策金利1.00%=31年ぶり)
- 日銀の利上げが、あなたの返済額に届くまでの流れ
- 【重要】5年ルール・125%ルールの落とし穴——返済額が変わらない本当の理由
- 金利0.25%・0.5%で返済額はいくら増えるか(3,000万円・35年で試算)
- 繰上返済・借り換え・変動か固定か——いまの考え方
- 今日からできる3つのこと
いま、何が起きているのか
まず現在地の確認から。ここ数年で、日本の金利は大きく局面が変わりました。

| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2024年 | マイナス金利政策が解除される |
| 2025年12月 | 政策金利が0.75%へ(約30年ぶりの水準) |
| 2026年春 | 多くの金融機関が基準金利を0.25%引き上げ |
| 2026年6月 | 政策金利が1.00%へ(1995年以来、約31年ぶり) |
利上げが、あなたの返済額に届くまで
日銀が金利を上げても、翌日から返済額が上がるわけではありません。間に、いくつかの段があります。
多くの金融機関は短期プライムレートを目安に変動金利の基準金利を決めています。そして変動金利の見直しは、通常は年2回(4月・10月が一般的)。ここまでは、比較的よく知られている話です。
問題は、この先です。
【最重要】5年ルールと125%ルールの落とし穴
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。
変動金利(元利均等返済)には、返済者を守るための2つのルールがあります。
125%ルール——5年後に返済額が見直されるときも、それまでの返済額の1.25倍が上限。いきなり2倍にはならない。
「なんだ、守られているじゃないか」——そう感じますよね。私も最初はそう思いました。
でも、ここに大きな誤解があります。
5年ルールが守ってくれるのは「毎月の返済額」だけ。金利が上がれば、その月に発生する利息は確実に増えています。
返済額が同じままなら、どうなるか。返済額に占める利息の割合が増え、元本の減りが遅くなります。つまり——
払っている金額は同じなのに、借金が減らなくなる。

数字にすると、はっきりします。残高3,000万円で、毎月の返済額が77,877円のままだとして——
| 金利 | その月の利息 | 元本に回る分 |
|---|---|---|
| 0.5% | 約12,500円 | 約65,400円 |
| 1.0% | 約25,000円 | 約52,900円 |
同じ77,877円を払っているのに、元本の減りは約19%も遅くなります。通帳の引き落とし額は1円も変わらないので、この変化には気づけません。これが5年ルールの怖さです。
さらに厳しいケース:未払利息
もし金利が大きく上がり、毎月の返済額がその月の利息すら賄えなくなったらどうなるか。
不足した分は「未払利息」として扱われ、返済してもローン残高が減らない——場合によっては増えていくという状態が起こりえます。
そして125%ルールも同じです。上限を超えた分が消えるわけではありません。次の見直し以降や、最終回にまとめて繰り延べられます。先送りされているだけなのです。
だから、こう考えてください。
この猶予の期間に手を打てるかどうかが、この先の家計を分けます。
※5年ルール・125%ルールは元利均等返済の変動金利が対象です。金融機関によってはこれらのルールを採用していないところもあり、その場合は金利上昇が返済額に速く反映されます。ご自身の契約内容を必ずご確認ください。
金利が上がると、いくら増えるのか【試算】
では、具体的にいくら変わるのか。借入3,000万円・35年・元利均等返済・ボーナス払いなしという条件で試算してみます。

| 金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 | 0.5%との差 |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 約77,877円 | 約3,271万円 | — |
| 0.75% (+0.25%) |
約81,234円 | 約3,412万円 | +約141万円 |
| 1.0% (+0.5%) |
約84,685円 | 約3,557万円 | +約286万円 |
月々で見れば、0.25%の上昇で約3,400円。「思ったほどでもない」と感じるかもしれません。
でも、返済は35年続きます。総額で見ると0.25%で約141万円、0.5%で約286万円。固定費の見直しで月3万円浮かせるのと同じくらいのインパクトが、金利という数字ひとつで動いているのです。
※当ブログによる試算です(元利均等返済・全期間同一金利・ボーナス払いなし・手数料等を含まない前提)。実際は金利が期間中に変動し、諸費用・保証料・団信の条件によっても変わります。正確な金額は金融機関のシミュレーションでご確認ください。
じゃあ、どうすればいい?
変動と固定、どちらが正解か——正直な話
ここは正直に書きます。「これから金利がどうなるか」を当てられる人はいません。私にも当然わかりません。
だから当ブログの立場は、予想合戦ではなく「どちらでも耐えられる家計にする」です。判断の軸はこうなります。
| 変動金利が向く人 | 固定金利が向く人 |
|---|---|
| 金利が上がっても返済を続けられる余力がある | 返済額が変わると家計が苦しくなる |
| 借入額が年収に対して控えめ | 借入額が大きい・返済期間が長い |
| 繰上返済できる貯蓄がある | 貯蓄が薄く、変動が精神的につらい |
| 残りの返済期間が短い | 教育費のピークが返済期間と重なる |
ポイントは「金利の予想」ではなく「自分の耐久力」で選ぶこと。金利が1%上がっても暮らせるか——この1問に答えられれば、選択はかなりはっきりします。
繰上返済すべき?——住宅ローン控除との関係に注意
「金利が上がるなら、繰り上げて返そう」と考える方は多いはずです。ただし、住宅ローン控除を受けている間は、話が少し複雑になります。
2026年度の税制改正で、住宅ローン減税の適用期限は5年延長されました。制度自体はしばらく続きます。そのうえで、繰上返済には注意点が2つあります。
- 年末残高が減る=控除額も減る——控除は年末のローン残高をもとに計算されるためです
- 期間短縮型で残り10年を切ると、控除の資格を失うことがある——控除には「返済期間10年以上」という要件があります
とはいえ、金利が上がるほど、利息の軽減効果が控除の減少を上回るケースも増えます。「控除があるから絶対に繰り上げない」も、「金利が上がったから全力で繰り上げる」も、どちらも早計です。
判断の順番としては、こう考えるのが安全です。
- 生活防衛資金は絶対に削らない——繰上返済したお金は、もう戻ってきません
- そのうえで余裕資金があるなら、控除の残り期間と金利差を比べる
- 迷うなら、控除期間が終わってから繰り上げるのも十分に合理的
手元の現金がゼロになると、病気や失業に対応できなくなります。生活防衛資金を残すことは、繰上返済より優先度が高い、というのが当ブログの立場です。
借り換えは有利?
借り換えは、条件が合えば効果の大きい手です。ただし手数料・保証料・登記費用などで数十万円かかるのが普通なので、「金利差 × 残高 × 残期間」が費用を上回るかで判断します。
一般には「残高1,000万円以上・残期間10年以上・金利差0.3%以上」あたりが検討ラインの目安とされます。借り換え後も返済期間が10年以上あるなど条件を満たせば、住宅ローン控除を継続できる場合があります。
そして忘れてはいけないのが団体信用生命保険(団信)。借り換えると団信を入り直すことになり、健康状態によっては新しい団信に入れないことがあります。金利だけでなく、ここも必ず確認してください。保障の考え方は生命保険の見直し方もあわせてどうぞ。
今日からできる、3つのこと

①自分の「適用金利」と「残高」を確認する
意外に思われるかもしれませんが、自分が何%で借りているか即答できない人は、かなり多いです。
返済予定表か、銀行アプリを開いてください。確認するのは3つ——適用金利・ローン残高・残りの返済期間。5分で終わります。ここが分からないと、この先の判断が全部できません。
②「金利が1%上がったら」を試算しておく
各銀行のサイトに返済シミュレーションがあります。いまの残高・残期間で、金利を1%足して計算してみてください。
出てきた金額を見て「これなら払える」と思えたなら、それがいちばんの安心材料です。「これは厳しい」と感じたなら、いまのうちに手を打てます。知らないまま迎えるのが、いちばん危ないのです。
③生活防衛資金を、少し厚くする
金利上昇への最強の備えは、じつは現金です。
手元に余裕があれば、返済額が上がっても耐えられます。繰上返済も、借り換えの費用も、選択肢として持てます。選べる状態そのものが、リスクへの備えです。
家計に余白を作る方法は、固定費の見直しと家計管理のやり方にまとめています。住宅ローンは固定費の中でも最大の一つ。ここを理解しておくと、ほかの節約の意味も変わって見えてきます。
これから買う人へ
最後に、これから購入を考えている方へ。
銀行が貸してくれる上限は、あなたが無理なく返せる額ではありません。金利が1%上がっても払える額を上限に考えてください。
②諸費用を忘れない
登記費用・保証料・火災保険・引っ越し代など、物件価格以外にまとまった現金が必要です。
③頭金を入れすぎない
現金をすべて頭金にすると、いざというときに動けなくなります。生活防衛資金は必ず手元に残すこと。
④「今が底」も「これから下がる」も、誰にも分からない
金利も価格も予想はできません。予想ではなく、耐久力で決める——これが唯一の再現性のある方法だと思っています。
まとめ|返済額が同じでも、中身は動いている
- 2026年6月、政策金利は1.00%へ(1995年以来、約31年ぶりの水準)
- 変動金利は短期プライムレート経由で反映され、見直しは通常は年2回
- 5年ルール・125%ルールは「猶予」であって「値引き」ではない。返済額が同じでも利息は増え、元本の減りが遅くなる
- 金利上昇が大きいと未払利息が発生し、返済しても残高が減らないことがある
- 3,000万円・35年なら、+0.25%で総額約141万円/+0.5%で約286万円の増加(当ブログ試算)
- 選び方は予想ではなく「1%上がっても暮らせるか」で判断する
- 繰上返済は生活防衛資金を削らないのが大前提。控除との兼ね合いも確認を
- 今日やること=①適用金利と残高の確認 ②1%上乗せの試算 ③現金を厚くする
金利のニュースは、遠い世界の話のように聞こえます。でも住宅ローンを抱えている人にとっては、毎月の生活と地続きの話です。
こわいのは金利そのものではなく、知らないまま5年が過ぎてしまうこと。5年ルールが与えてくれているのは、猶予という名の準備期間です。今日、返済予定表を開くところから始めてみませんか。
※本記事は2026年7月時点の公開情報にもとづく一般的な解説であり、特定の金融機関・商品の利用や、借入・借り換え・繰上返済を推奨するものではありません。金利・制度・税制は変更される場合があり、5年ルール等の取扱いは金融機関により異なります。試算は当ブログが一定の前提を置いて計算した参考値です。実際の金利・返済額・控除の適用可否は、借入先の金融機関、国税庁の情報、税務署や専門家にご確認ください。


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